
小池健輔
いつ、誰が撮影したかもはや定かではない、アノニマスな古いファウンドフォトや絵葉書を使って、ユーモアとアイロニーに満ちた作品を制作する小池。
写真をカッターで切りながら、イメージを再構築することで、もともと持っていた意味は剥奪され、新たな意味が加えられる。
今回は、宇和島に滞在し、名産の果実であるみかんを題材にコミッションワークを制作した。
みかんの皮を一筆書きのように剥いてスキャナーで読み取らせて印刷。断片をもとの通りにつなぎ合わせていくと、原型に戻り、紙のみかんが完成する。
果実だった記憶の名残をとどめた、彫刻のような存在が現れ、町の中に意外な大きさや数で登場することで、身近な存在が持つ歴史や新たな魅力に気づくことになる。
profile
1980年名古屋生まれ。
現在はイタリア・ヴェネツィアを拠点に活動する現代美術作家。
写真や絵葉書といったヴィンテージ素材を用い、「何も加えず、何も取り除かず(No More, No Less)」という哲学のもと、カットと再構成のみで新たなイメージを生み出す独自のコラージュ作品で国際的に高い評価を受ける。
その緻密で詩的な作品は、視覚の錯覚と現実の境界を問い直し、既存の記憶やイメージに新たな物語を付与する。
世界各地で展覧会を開催。