岩根愛
《KIPUKA》は、ハワイの日系社会に根づく盆踊りと、福島から伝わった盆唄「フクシマオンド」を手がかりに、移民の記憶と土地の連関をたどる長期プロジェクト。
2006年から取材を重ね、夏の三カ月でハワイ各地の寺院約90カ所のボンダンスを記録し、後に福島にも拠点を置き両地域の響き合いを撮影した。変わるものと変わらないもの、共同体の持続、二つの土地を結ぶ盆唄が道標となり、物語が立ち上がっていく。
“キプカ”は溶岩流に残った植物の島を指すハワイ語で、生き残った種子がもたらす新しい生命の始まり、断絶の中に残る拠り所の比喩でもある。
今回は、2023年8月にマウイ島ラハイナを襲った大火のあと、ラハイナ浄土院をはじめとするコミュニティを追った《KIPUKA》に続く作品を発表する。
今回、ハワイ・ホノルル市と姉妹都市の関係にある宇和島市で初めて展示される。
profile
東京都出身。無形文化や自然伝承を紐解いて、写真および映像作品を制作、発表している。
2018年、移民を通じたハワイと福島の関わりを追った『KIPUKA』(青幻舎)を上梓、第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞、第3回プリピクテジャパンアワード等受賞。
著作『キプカへの旅』(太田出版, 2019)。『A NEW RIVER』『Coho Come Home』( bookshop M, 2022, 2024)